イオン結合でできる化合物の名前について


「硫酸ナトリウム」はHがないのに、なぜ「硫酸」なのですか?
よくある質問です。

詳しい説明の前に、ある学校での会話を再現します。
生徒「塩素がイオンになると、名前は何というのですか」
先生「塩素イオンだよ」
生徒「そのまんまだ、分りやすい」
先生「NaClの名前はわかるかな」
生徒「ナトリウム塩素、かな」
先生「おしいなー」
生徒「塩素ナトリウムだ」
先生「ちがう、塩化ナトリウムだ」
生徒「塩素がなんで、(えんか)になるんだよ」
先生「そんなもん、決まっているから覚えろ」

これは、ほんとうにあった昔の話です。
先生は理由を説明できませんでした。生徒はちんぷんかんぷんです。

塩素のイオンが「塩素イオン」は非常に分りやすい名前です。しかし、一生懸命に覚えても後で役をしないのです。なので、生徒がイオンの名前を確実に覚えたら、その名前が生かされるように「イオンの名前を変更」しました。おもな、変更をあげると
塩素イオン→塩化物イオン
水酸イオン→水酸化物イオン
酸素イオン→酸化物イオン

イオンの名前が覚えられたら、化合物の名前は、単純に
「陰イオンの名前」「陽イオンの名前」と順番に読めばよいことになりました。
NaCl・・・「塩化物イオンナトリウムイオン」
KOH・・・「水酸化物イオンカリウムイオン」
MgO・・・「酸化物イオンマグネシウムイオン」
となります。

イオンの名前を覚えれば、化合物の名前は「機械的」に付けられます。「塩素ナトリウム」などという疑問はなくなりました。しかし、ゴチャゴチャしていると思いませんか。言い方がくどい。
なので、省略する約束を決めました。
「イオン」と「物イオン」は言わなくてもよい、という約束です。その約束に従うと

塩化物イオンナトリウムイオン→塩化物イオンナトリウムイオン→塩化ナトリウム
水酸化物イオンカリウムイオン→水酸化物イオンカリウムイオン→水酸化カリウム
酸化物イオンマグネシウムイオン→酸化物イオンマグネシウムイオン→酸化マグネシウム
となります。

最後に、注意事項です。化合物の名前は、最終的に「省略された名前」なので、日本語では「文字だけ」見たのでは、違いが分らないものがあります。
例えば、「硫酸カルシウム」です。これを、「硫酸」と「カルシウム」だと思う人がいます。
しかし、違いますね。「硫酸イオンカルシウムイオン」の略だからです。
日本語ではどちらも「硫酸」ですが、英語では明確に異なります。
硫酸カルシウムは、calcium sulfate、 sulfateは日本語で「硫酸塩」(硫酸イオンとくっ付いたという意味)
硫酸は、sulfuric acidなので、文字が異なるので間違うことはありません。

このような日本語の悲しい現実は、他にもたくさんあります。仕方がないので、覚えることは覚えるしかありません。

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